いびきと無呼吸症候群

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いびきをかくことは、家族内においてばかりではなく、会社での旅行などで他の人と同じ部屋で寝るときにはそのうるささが大きく迷惑をかけるばかりではなく、本人にとってもストレスであります。いびきをかかない人にはわかりませんが、いびきで悩んでいる人はかなり多いと思われます。そこで、いびきで悩んだ末に耳鼻咽喉科へ受診するわけですが、医者からしますと以前にはいびきは病気ではなく、症候的概念として扱われていたので、「いびきぐらい病気ではない。治療法はない。」という答えしか返ってこなかったのが事実です。しかし、社会生活が向上するにつれ、いびきという単なる雑音も社会から見ると人に迷惑をかけるという理由だけではなく、いびきをかく本人へなんらかの悪影響が出る可能性があるということが判明したためにいびきを積極的に治療する方向に転じてきました。

1. いびきとは?

1969年の鼾(いびき)の清書によると、「睡眠中にのみおこる異常呼吸音」であると書かれています。すなわち、寝ている間に呼吸によりおこるもので、本人の意識とは関係なく、軟口蓋、口蓋垂(のどちんこ)、咽頭部より発生します。簡単には、のどが狭かったりのどちんこが振動するといびきが発生するのです。検査と治療はこの部位に対して行われます。 いびきは多少なりともほとんどの人はかくものです。疲労時、アルコール摂取時、頭の向き、肥満などの原因によりいびきは大きくなります。いびきが問題になるのは第1には騒音障害としてのいびきです。第2は睡眠時無呼吸症候群です。

2.睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時に呼吸が停止するエピソードを繰り返す現象で近年 20年の間に疾患概念が確立されました。症状はいびき、過眠、不眠などをおこし、睡眠時に10秒以上の呼吸停止を繰り返し、その程度が7時間睡眠中30回以上認められるものです。呼吸が止まることで、自然に覚醒反応が生じ、睡眠過程が障害されるとともに酸素を吸いませんので血液中の酸素濃度が低下します。さらに重症化すると高血圧、心不全、肺の循環障害により突然死を引き起こすとまで言われています。また、その他の症状としては知的機能の障害、性格変化、抑鬱、行動異常を伴うこともあります。 有病率に関しては、まだ世界的にも十分な調査は行われていませんが、諸研究の結果から、中高年齢層と老年層、とくに30〜69歳の男性に多いことから成人病の一つとも考えられます。推定の有病率は、中高年層男性ではイスラエルでは1.26%、スウェーデンでは1.3%、イタリアでは2.7%という高い値を示しており、おおむね1〜3%と推定されています。一方、65歳以上の高齢者のアメリカにおける調査では男性が28%、女性19.5%、平均24%で老年者のほうが睡眠時無呼吸の頻度が高いと考えられます。

3.睡眠時無呼吸無呼吸症候群の検査

終夜睡眠ポリグラフィ(アプノモニタ)という検査法で睡眠中のいびき、呼吸状態、酸素の濃度を測定する方法があります。睡眠中の呼吸の状態は本人は知ることはできませんし、妻などの家族に終夜無呼吸の回数と時間を測定してもらうのはかなり困難なことです。最近になり、この終夜睡眠ポリグラフィ(アプノモニタ)は簡易型になり、自宅でのモニターも可能になりました。睡眠時無呼吸症候群としての基準を上回るような、呼吸停止回数、持続時間、酸素濃度の低下が認められれば、治療が必要になります。 また、口腔内の所見では、図に示すように咽頭内の広さと口蓋垂のサイズについて視診上の程度を決めます。ポイントは口蓋垂の長さ・幅、口蓋扁桃の大きさ、口蓋扁桃の周囲の状態(咽頭腔が狭いか否か)、舌の大きさなどであり、いびきを改善するための手術の方法と切除範囲を決定します。

いびきは咽頭腔の狭窄がひとつの原因ですが、鼻の中も狭くて睡眠時に口呼吸しかできないほど鼻閉があればいびきが増強し、ひいては睡眠時無呼吸無呼吸症候群にもなります。 このような場合には、鼻腔通気度検査やレントゲン検査、鼻内ファイバースコープが有効です。

4.睡眠時無呼吸無呼吸症候群の治療法

では、今まで述べてきたような症状があり、耳鼻咽喉科へ受診したところ、睡眠時無呼吸症候群の診断をうけたら、どのような治療法があるのでしょうか。

まず決まって言われることは保存的治療が第1です。睡眠中の体位で完全な横向きまでなる必要はなく、やや斜めに寝る程度でもいびきは改善します。パジャマの背中にゴルフボールやテニスボールを縫い付けておく方法は有効と言われます。また睡眠時無呼吸を来す患者は肥満が多いことは確実ですので、体重減少を図るのもまず行ってみる手段です。以上のようなことを試みてもいびき、睡眠時無呼吸が良くならない場合には持続的陽圧呼吸(CPAP)という夜間酸素マスクを装着してやや呼吸をアシストする方法があります。この方法では、狭くなりかける咽頭腔を陽圧呼吸で広くすることができるので、睡眠時無呼吸の症状である昼間の眠気はほぼ軽快します。

また、手術法に関しては、鼻腔の狭窄には鼻中隔矯正手術、鼻茸切除術、下鼻甲介切除術が行われ、咽頭の上部(アデノイド)の狭窄にはアデノイド切除術、中咽頭の狭窄には口蓋扁桃摘出術と口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)が行われます。 鼻の手術は、鼻の中でしきりになっている鼻中隔が彎曲していますと空気が抵抗を受けて吸われることになり、鼻閉が生じます。鼻中隔矯正手術はこのしきりの芯になっている鼻中隔軟骨を摘出してまがっている鼻中隔を矯正する方法です。また、副鼻腔炎や鼻アレルギーによる産物である腫脹した粘膜である鼻茸があれば、鼻閉の原因になりますので切除します。最後に鼻の中で両側から迫り出している鼻甲介という部分が通常より肥厚していますと鼻の中が狭くなるので鼻閉が生じます。この鼻甲介を薄くすると空気の通り道が広くなりいびきの改善になります。手術方法は、全身麻酔で行われますし、場合によっては局所麻酔でも可能です。しかし、レーザーで鼻甲介を蒸散させる方法以外には入院が必要です。どの方法がよいかは、鼻閉の状態によって決まりますので耳鼻咽喉科医と相談してください。

中咽頭の狭窄には原則的には全身麻酔で口蓋扁桃摘出術を行い、さらに口蓋垂軟口蓋咽頭形成術をおこなって、咽頭腔の形を広くします。約10日の入院期間が必要です。この手術で、全員のいびきがよくなるわけではありませんが、半数以上はいびきも睡眠時無呼吸も改善するといわれます。近年では、レーザーの進歩により外来でも口蓋垂軟口蓋咽頭形成術が可能になりました。手術までの改善率はありませんが、入院が不要なこととある程度の結果がすぐに期待できることが利点です。さらに鼻の手術も併用すると改善率はより高くなります。当クリニックでも検査と手術を行っています。

5.まとめ

いびきも睡眠時無呼吸症候群も現在は立派な病気の一つです。その治療法は患者の状態により検討された上で選択されるべきですので、専門の耳鼻咽喉科医師とよく相談の上、治療をうけるとともに自らもダイエットなどの努力をしていただきたいと思います。

( いびきをかきやすいのどの形 )

いびきをかきやすいのどの形

いびきをかきやすいとき いびきをかきやすい人

( 口蓋垂咽頭形成術 (入院して全身麻酔で行う場合) )

口蓋垂咽頭形成術 (入院して全身麻酔で行う場合)

軟口蓋咽頭形成術の一例 軟口蓋咽頭形成術の一例

レーザーにての軟口蓋咽頭形成術の一例、左は術前で、軟口蓋が広く、口蓋垂も長い。右は術後で、大きく咽頭のスペースを広げている。

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